新着情報

木崎浜は遊泳禁止です!!

2013.07.15


木崎浜は遊泳禁止です!!
少しでも多くの方に知って頂きたく、サーフィンフォトグラファーの藤野氏のブログをそのまま転載させて頂きます。この先、このような事故が起こらない事を願って・・・
Fujino
—————————————————————————————————————-
2010年8月14日15時に撮影依頼をいただいていたので木崎浜に。大きな階段前でお客さんと待ち合わせ。しかし肝心の波が膝サイズで話し合った結果、 中止にすることに。その後、お客さんとおしゃべりをしているとビーチから汗だくになった先輩が階段を上がってきて僕に一言。
「子供が行方不明になった!!」
その一言が取り返しのつかない事故になるとはその時は思いもしませんでした。以前もそうだったし、犬が行方不明になったときも戻ってきたし、今回も同じはず・・・。とても安易でした。
お 客さんと別れ、行方不明になった子供の状況を確認しようと思ったが、先輩に場所の確認をしていなかったので、とりあえず加江田川河口方面に車を走らせるこ とに。メインビーチを横目に河口付近に近付くと多くのサーファー達がいつものように波乗りを楽しんでいる。ビーチでは海水浴を楽しんでいる家族や休憩をし ているサーファー達の姿。
それはいつもの光景に見えた・・・。
じっと観察していると、その中に先程階段前であった先輩やスクールで来ていた中迫プロの姿が。あきらかに他の人とは違う雰囲気・・・。僕の中で「ここで行方不明になったな」と確信した。車を止め中迫プロのもとへ。眉間にシワを寄せ真剣な表情の中に不安な顔を見せ
「○○が海で行方不明になった!!」
その名前に僕は愕然とした。それは奈良から叔母のもとに遊びに来ていた知人の子供の名前だった。
そ こに青島からライフセーバーの藤田君達がジェットスキーを走らせやってきた。どうやら119番・海保等への連絡済みの様子。海ではサーフィンを楽しんでい るサーファー達に混じり数名が子供の行方を探している。周りいた人から状況を聞くと、姉弟(4年生・1年生)で波打ち際で遊んでいたところ波に足を取られ 溺れてしまい姉は近くにいたサーファーに救助されたが、弟の姿が・・・・。
ようやく状況が見えてきたころに、その行方不明になっている子供の姉と叔母が僕の方へ。「○○がいなくなったよ」。震える声で僕に声を掛けてきた。
この時も、裏の松林やビーチで遊んでいて「ヒョイッ」っと現れるのでは・・・っと安易な気持ちの僕。
車 に戻りサーフパンツに着替え、足の届く場所ですでに捜索していた方々に混じり探す事に。しかし捜索範囲は限られると感じ、水泳用のゴーグルと足ヒレを取り に戻り沖合いを中心に捜索開始。そうしている間に陸上には数台の消防車や救急車、空には数機のヘリコプターの姿。ギャラリーの数も増えてきた。ようやく サーファー達も消防やライフセーバーに促され陸上に上がってきた。少しずつ捜索する人も増えてきたところに消防から僕達も上がるようにと指示が。消防か海 保か分からなかったがゴムボートで捜索開始。何やら網みたいなものを投げているが見つからない。さらにボンベを背負ったダイバー5人がまったくその日のカ レントと逆らった場所を探し始めた。・・・しかし視界不良なのか2、3分で断念。
「そんなとこ探しても見つかるわけない!!」
僕の中でイライラが沸き立ってきたのと同時に、それが安易な事故ではないとようやく気が付くバカな僕。陸で指をくわえて見ていた僕達。その中から「消防にもう一度、俺達で探して良いか聞いてくる」とライフセーバーの1人が交渉に行き「お願いします」と許可が降りた。
ようやく皆が「絶対に見つけだそう!!」っという熱い想いとなり、ひとつとなる。
数 名は手を繋いで一列になり隙間無く探していくことに。他はサーフボードの上から。釣り人や漁船も応援に来てくれた。僕はまた水泳用のゴーグルと足ヒレを持 ち、みんなより沖合いの海底を潜ることに。その日のカレントと、先程探した時に気付いた海底の沖に流れるカレントを読んで、溺れた場所から北に100m、 そこから沖合い50mくらいの場所に。陸の電柱を目印にして一度海底まで潜り、沖と岸の往復を繰り返した。
正確な時間は何時だったのだろう・・・。19時前くらいだったと思う。水中の視界が悪くなってきた「日暮れが近い」。時間が少なくなってきた。水深2〜3mの海底では視界が50cmくらい。それでも岸と沖の往復を繰り返す。陸上では諦めムードが漂っている。
しかし、なんの根拠も無かったがおそらく「僕が発見する!!」っと本気で思っていた。残り時間が少ないにも関わらず「大丈夫!!」っと自信があった。捜索している周りの仲間達からは絶対に諦めない気持ちが伝わってくる。陸上では叔母が手を合わせ祈る姿が見える。
沖と岸を何度往復しただろう。海底は闇に包まれ緑黒い空間、無音の世界が広がる。数十回目の海底へのダイブ。海底まで3mくらい。海底に手が届いたその瞬間・・・。帽子をかぶった子供が左前方から僕の顔の真横に突然現れた!!!!
「見つけた!!!!!!」
左手で子供の手を取り、さらに引き寄せ体全体を抱きかかえて水面に浮上した。僕は無我夢中で叫び応援を呼ぶと、それを聞いたライフイセーバーの藤田君が駆け付け「後ろに乗って!!」っと素早い指示。
ジェットスキーの後ろに少年を抱きかかえたまま乗り、岸を目指して走っている間がとても長く感じた。
ちょっと気を失っていて、すぐに目覚めそうな小さな体。子供の香りがする。なぜこんなことに?? ごめんな・・・。
岸に到着し藤田君が子供を抱え一気に救急車に走っていく。叔母も駆け寄っていく。僕は人生最大の脱力感に襲われ目の前は真っ白に。無念・・・。
少年を乗せた救急車がその場を離れて行く。少年の友人達だけでなく、捜査に協力してくれた少年とは初対面の方々も涙が止まらない。
そして皆が思うことは「後悔」っという言葉。
捜索から約4時間30分後。病院到着後は脈の確認はできたが蘇生ならず、医大にて死亡が確認された。
僕の左腕には強く抱きしめたせいか広い範囲でアザが以後数日残っていた。少年からの感謝の気持ちなのか、無意味な事故にしないで!!っというメッセージなのか・・・。最初、この事故がどこか他人事に思ってしまっていた自分が情けない。
躊躇することなくもっとより早い判断ができていれば・・・。
サーファー全員の意識が高ければ・・・。
もっと一致団結が早ければ・・・。
そこにいたサーファー達にすばやい指示と応援要請ができていたら・・・。
プロサーファーやサーフショップ・サーフィン団体・ローカルに応援要請と連携の仕組みがあれば・・・。
その他いろいろと・・・。
僕も含め、何もかもが経験不足・意識不足・危機感の無さで取り返しのつかない事故になってしまった。
木崎浜は海水浴禁止です!!
お子さんにサーフィンを教えているお父さん・お母さん、くれぐれもお子さんから目を離さないで!!
海水浴禁止場所で遊んでいる家族や子供に勇気を持って声を掛けましょう!!
この死を無駄にしてはいけない!!絶対に!!
これからサーファー全体の意識の改善や事前の事故防止策、事故後の対応策等を話し合っていかないといけないと痛感しました。
今回のブログの内容がひとりでも多くの方の胸に響いてくれることを願います。
今回の事故で協力していただいた皆様に感謝するとともに、亡くなった少年に心よりご冥福をお祈りします。
—————————————————————————————————————-
ご協力をお願いいたします。